「就労移行支援」という言葉を聞いたことがあっても詳しくは分からない、という方も多いでしょう。どのようなサービスで、どのような人が利用できるのでしょうか?
そこで今回は、就労移行支援の流れや利用対象者・利用期間・利用料金などについてわかりやすく解説します。「働きたいけれど、どうしたらいいかわからない」など、就労に対して不安がある方はぜひご覧ください。
■就労移行支援とは?
就労移行支援とはどのようなサービスなのか説明します。
就労移行支援とは、障がいのある方が働くために必要な知識やスキルを習得し、就職できるように支援することです。
一人ひとりに寄り添いその人に合った課題を解決しながら、就職までのアシストをします。また、就職後も職場に定着できるように定期的な面談などを行います。
障害者総合支援法で定められたサービス
就労移行支援は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(略して、障害者総合支援法)」で定められた「障害福祉サービス」のひとつです。障がいの有無にかかわらず、国民が人格と個性を尊重して安心して暮らせるよう制定されました。
つまり、就労移行支援は障がいのある方の「働きたい」という気持ちを法的にサポートするサービスです。
就労移行支援の流れ
就労移行支援を受けたら、どのような流れで就職できるのでしょうか?ご紹介します。
就労移行支援事業所に相談する
働きたいと考えたら、まずは就労移行支援を行っている事業所を訪ねましょう。
「体調が万全ではないから短時間勤務がいい」
「事務職にチャレンジしてみたい」
など、どのような就労を希望しているのか、不安なことは何か、など何でも相談することができます。
トレーニング(知識・スキル習得)
就労移行支援事業所にて、就労に向けてさまざまなトレーニングを受けることができます。
【トレーニング例】
・ビジネスマナー(挨拶・電話対応・来客対応など)
・パソコン(Word・Excel・PowerPoint・タイピング・HP作成など)
・SST(社会生活技能訓練)
・JST(職場対人技能訓練)
・グループディスカッション
・模擬就労(宛名書き・検品・書類整理など)等
就労移行支援でのトレーニングは、病院や生活支援に通いながら併行できます。コミュニケーションが苦手な方なら、まずはスタッフと会話をすることから始めることもできます。ご自身のペースでトレーニングが行えるためご安心ください。
就労移行支援事業所に行くことで生活リズムを整えたり、知識やスキルを習得できたりするため、就労に向けてあらゆる可能性を見出すことができるでしょう。
職場見学・実習
トレーニングを繰り返していくと、ご自身の強みが見えてきます。その「強み」が仕事とマッチするか、職場見学や実習に行くことで確認できます。
強みがわからない場合でも、実際に職場を体感することで自分に合った就職先はどこなのかを考えることができます。また、「苦手だと思っていたけれど、意外とこの仕事が合っている」などと気づくこともあるでしょう。
就職活動
就労するための知識やスキルを身につけ、働きたい職種が決まったら、就職活動を行いましょう。就労移行支援事業所では、合同説明会への参加や求人応募などといった就職活動のサポートを行います。
【就職活動サポート例】
・企業研究
・求人応募
・面接練習
・履歴書作成サポート
・職務経歴書作成サポート 等
複数社の求人に応募すると、履歴書作成や面接の日時調整など忙しくなることがあります。就労移行支援事業所のサポートを受けて、計画立てて進めていくといいでしょう。
職場定着支援
就労移行支援は就職したら終わりではありません。その職場で長く働き続けられるよう定着支援を行っています。定期的な面談を行い、仕事や人間関係など何か不安なことはないか相談にのり、アドバイスなどをします。
就労移行支援が利用できる対象者
就労移行支援を利用するためには、下記条件に該当する必要があります。
【利用条件】
・65歳未満
・一般企業などへの就労を希望する方
・障がいのある方(精神障がい・知的障がい・発達障がい・身体障がい)
・難病のある方(障害者総合支援法の対象疾病)
障がい者手帳がなくても、医師の診断または自治体の判断によって利用可能な場合があります。
就労移行支援の利用期間
就労移行支援は、利用できる期間が定められています。ここでは、就職するまでの支援期間と就職後の定着支援期間をご紹介します。
就職するまでの支援期間
最長24か月の期間となります。しかし自治体によっては、申請して審査が通れば24か月以上サービスを受けられる場合があります。
就職後の定着支援期間
就職後の定着支援は、6か月の期間となります。
就労移行支援の利用料金
ご本人または配偶者の前年度所得によって、利用料金が発生することがあります。
【利用料金】
・生活保護受給世帯:負担なし
・市町村民税非課税世帯:負担なし
・市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※:9,300円/上限(月)
・上記以外:37,200円/上限(月)
(※ 20歳以上の入所施設利用者、グループホーム・ケアホーム利用者を除く)
【交通費】
交通費は、原則として自己負担となります。
利用料金は減免等がある場合もあるため、詳しくは自治体にお問い合わせください。
また、交通費も自治体や就労移行支援事業所によっては補助が出る場合もあります。
就労移行支援の工賃について
工賃とは、利用者が行った作業に対して支払われる報酬のことです。
就労移行支援で行う作業は就労目的のトレーニングのため、工賃の支払いはありません。ただし、就労移行支援事業所によっては工賃作業を行っていることもあります。詳しくは、各就労移行支援事業所にお問い合わせください。
まとめ
就労移行支援は、「働きたい」という気持ちを後押ししてくれるサービスです。一人で行動するよりも、プロのサポートを受けることであらゆる知識やスキルが得られ、より広い範囲から就職先を選ぶことができるようになるでしょう。
「働きたいけれど不安」という気持ちは抱えたままでも大丈夫です。就労移行支援サービスを受ける中で、少しずつ不安を解消していきましょう。
まずは、第一歩を踏み出してみてくださいね
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